高血圧の基準は? 人間ドック学会の発表の不思議

2014年4月の出来事です。

日本人間ドック学会と健康保険組合連合会がまとめた高血圧に関する数値の基準案が、
従来の目安より大幅に緩かった内容でした。

従来の基準では高血圧の人が、人間ドック学会の基準では高血圧ではないという人が、
少なくありませんでした。

血圧に悩んでいる人はかなり混乱したかと思います。
ちょっと古いですが、その顛末を追ってみました。

 

人間ドック学会の基準

 

きっかけは、人間ドック学会と健康保険組合連合会が合同でつくる
「検査基準値及び有用性に関する調査研究小委員会」が発表した
「新たな健診の基本検査の基準範囲」という報告書です。

血圧以外にもコレステロールなど、おなじみの基準値を大幅に緩めたものでした。
中でも血圧の基準値の変動は大きく、これまで高血圧として治療を受けていた人の中で、日本ドック学会の基準では異常なしの範囲に入る人も少なくありませんでした。
(表参照)

報道でも高血圧の基準緩和と大きく報道され、困惑する人もいました。

高血圧の基準

 

その後の顛末

 

人間ドック学会の「新基準」が公表されたわずか10日後の4月14日に、
日本高血圧学会(JSH)が「高血圧の判定基準は140/90mmHg以上で変更ありません」との見解を発表。

5月21日には日本医師会と日本医学会が共同見解を出しています。

特に後者は手厳しく、人間ドック学会の報告を「拙速」「エビデンス(科学的根拠)が高いとは言えない」と批判しています。

現時点では日本高血圧学会は「事態は沈静化しつつある」としつつも、
「(高血圧の基準が)緩和されたかのような誤った印象は一部に根強く残っており、
いまだ混乱を招いているように思われる」としています。

 

どうしてこうなったのか

 

原因は調査をする元データと目的の違いによります。

◆日本高血圧学会では
JSHなど関連学会の「判定基準」は、一般市民を何十年となく追跡調査する中で、
将来、脳梗塞や心筋梗塞など致命的な病気の発症を防ぐには血圧をここまで管理する必要がある、と定められた数値です。

年齢、喫煙歴や高血糖、腎機能の低下など、発症リスクが重なるごとに「判定基準」が厳しくなっていきます。

◆人間ドック学会では
人間ドック学会の「新基準」は、人間ドック受診者150万人の中から抽出された健康人のみのデータを解析したものです。

喫煙なし、飲酒量は1合/日未満、肝機能や腎機能も正常、
しかも、血圧値を解析対象とした人のBMI(体格指数)は25未満の標準体形です。

つまり「日本高血圧学会では、未来の病気の発症リスクを想定」しているのに対し、
「人間ドック学会では、いま現在の健康証明」になります。

人間ドック学会もそこは慎重で「新基準」の妥当性を検証する追跡調査を行う予定で、
当面は現行基準を使うそうです。

なんとも、関連学会が多く、ごちゃごちゃして分かりにくいですね。
結論としては、人間ドック学会の方が旗を降ろした格好です。

無力化

ただ、一方では高血圧の基準は「さじ加減」という感じが否めません。

日本高血圧学会の高血圧の判定基準も、2000年の160/90mmHg以上から、
140/90mmHg以上(04年)へ、と変遷があります。

それに伴い、降圧目標は130/85mmHg未満(00年)から140/90mmHg未満(14年)へ変更されています。

この間、心臓疾患での死亡者数に大きな変動はなく、目立った効果はないようです。

ちなみに、基準が厳しくなった1990年代終盤~2000年代は、
「ディ○バン」などの登場で、世界中の降圧剤市場が右肩上がりに急上昇した時期と重なります。

色々な学会、業界の思惑があり、患者さんが置いてきぼりもなっているような気がします・・・。



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